採用に苦戦する企業が増えています。その中でも中小企業は、かつて経験したことのない人手不足に直面しているといっていいでしょう。今後も労働生産人口の減少が予測されている状況で、人材確保は最優先の課題といっても過言ではありません。そこで今回は、採用に苦戦する中小企業が見直すべき採用活動の7つのポイントについてお伝えします。
目次
ますます厳しくなる人材確保
「募集しても応募がない」「なかなかいい人がいない」「希望の人材とは大きく異なる人から応募がある」といったお悩みをお聞きすることが増えています。
冒頭でお伝えしたとおり、採用に苦戦しているのは中小企業だけではありません。そうした状況にもかかわらず、自社ホームページで募集していなかったり、求人に関する情報が整備されているいなかったりというケースが、散見されます。それが残念でなりません。
程度の差こそあれ、人材獲得に苦労しているのは、どの企業も同じだといえるでしょう。目下の業務や課題に取り組むのは欠かせませんが、数年後や十数年後といった近い将来のことに目を向けたとき、経営者であれば採用の重要性は自ずとお分かりいただけるはずです。
この苦境にあっても、少しでも自社や業務について知ってもらい、応募につなげていくために見直しておきたいポイントを確認しましょう。できることから始めるのが大切です。
採用に苦戦する中小企業が見直したい7つのポイント
- 自社のホームページ(自社Webサイト)はありますか?
- 会社概要がわかるようになっていますか?
- 代表者からのメッセージはありますか?
- 一緒に働く仲間の顔が見えますか?
- 求人情報が掲載されていますか?
- 自社サイトから応募ができるようになっていますか?
- 限られたリソースで採用活動ができていますか?
自社のホームページはありますか?
最初にここから始めましょう。自社ホームページをお持ちでしょうか。もし、まだないのであれば、すぐに開設しましょう。既存のものがある場合には、求人情報の掲載に合わせてリニューアルをおすすめします。
なぜ自社ホームページが必要なのでしょうか。その理由は、求職者の企業研究や情報収集にホームページが大きな役割を果たしているからです。ホームページとSNSの違いについても理解していただきたいので、詳しくは「限られたリソースで採用活動ができていますか?」の項目で触れます。
会社概要がわかるようになっていますか?
ホームページを開設したら、会社概要を公開しましょう。求職者が企業サイトを見に来る理由は、その企業についてもっと詳しく知りたいという1点に尽きます。会社概要に含まれる情報は、具体的には以下のようなものです。
- 基本情報(会社名・所在地・電話番号・設立年月日・代表者(役員)・資本金・事業所一覧・従業員数・取引銀行・取引先・株主など)
- 事業内容
- 歴史や沿革、受賞歴、メディア掲載歴、地域や社会のために実施している活動など
基本情報は、すべて必要というわけではありません。一般的に、会社名から資本金までは多くの会社が公開している情報といえます。求職者にとっても大切な情報ですので、正しく掲載しましょう。
事業内容も必須です。どのようなことを事業としているのかを伝えましょう。事業内容を一言で表すとどうなるか、短文で表すとどうなるか、詳しく説明できるなら何を伝えるかといった情報整理が必要です。
沿革や歴史も記載しましょう。どのように事業拡大や発展を遂げてきた会社なのかがわかると、求職者は親近感を覚えやすくなります。受賞歴やメディア掲載歴、地域や社会に貢献する活動があれば、それも公開しましょう。
代表者からのメッセージはありますか?
代表者はその企業の顔です。中小企業の場合は、代表者が創業者やその関係者という場合も珍しくありません。どのような思いから始まった事業なのか、何を大切に活動し、どこを目指しているのかなど、思いの丈を綴りましょう。
経営理念も記載しておくことをおすすめします。もし、これまでしっかりと言語化や明文化してこなかったという場合、この機会に考えましょう。それぞれの英単語の頭文字からMVVと呼ばれることもあります。
- ミッション(Mission):企業として果たすべき使命や存在意義
- ビジョン(Vision):企業として実現を目指す理想像
- バリュー(Value):ミッションやビジョンの達成に必要な行動指針や行動基準(価値観)
一緒に働く仲間の顔が見えますか?
「どんな人達と一緒に働くのだろうか」というのは、組織に所属することを考えている求職者にとって大事な情報です。代表者の考えも企業理念も分かった後で、一緒に働く仲間というより身近な部分に興味が移るのは自然なことだといえるでしょう。
採用情報のところに、実際に働いている従業員の写真を入れるだけでも印象は大きく変わります。要職や募集職種に就いている先輩従業員の写真や声(入社の決め手や仕事のやりがいなどの文字情報)、インタビュー動画などを名前を伏せて掲載するのも、採用に苦戦する中小企業が取り入れたいアイデアです。
ただし、あれもこれもと一時に頑張りすぎてしまい、コンテンツとしての質が落ちてしまうリスクが高いのであれば、こちらの優先順位を一旦下げましょう。どれも大切なポイントですが、求職者にとって重要な情報のため、しっかりと時間を取るようにします。
求人情報が掲載されていますか?
求人情報を掲載しておけば、求職者が自社を見つけて応募する可能性があります。採用難に喘ぐ中小企業は、必ず採用ページ(採用情報)を設けましょう。少なくとも、以下の3つが必要です。
- 募集要項(業務内容・勤務地・勤務時間・勤務日数・休日・給与・雇用形態・福利厚生など)
- 応募方法と連絡先(メールで応募書類を送付など、採用担当者名とメールアドレスなど)
- 選考プロセス(書類選考と面接2回など)
募集要項にどのような情報を記載したらいいかわからないという場合は、ハローワークの求人票を一度見てみましょう。募集職種や人数が欠員や増員などのタイミングによって随時変わるのであれば、「募集職種はお問い合わせください」として、問い合わせにつなげるのもひとつの方法です。
求人は、職種ごとに出します。その職種の詳しい業務内容やそのポジションに求める人材像を書き記したものを「ジョブディスクリプション」と呼びます。このジョブディスクリプションを作っておくと、それを採用基準にできるため、採用側の判断のブレを少なくできます。
求職者に応募方法がわかるようにしておくことも大切です。応募書類を郵送するのか、メールに添付して提出するのか、まずは応募フォームから連絡するのかなど、応募方法にもさまざまなやり方があるからです。
選考プロセスを事前に公開しておけば、求職者は自分の採用選考がどこまで進んでいるのかわかります。面接はオンライン・オフラインともに対応可能かどうかを明記し、可能であれば、おおよそ1.5ヵ月などのように採用選考期間の目安も示しましょう。
自社サイトから応募ができるようになっていますか?
求人情報を確認した後に、求職者がそのまま応募できるよう、自社サイトを設定しておきましょう。中小企業の強みのひとつに、事業そのものや代表者(経営者)、一緒に働く仲間の魅力がダイレクトに伝わりやすいという点があります。
大企業のような安定性や大きな規模感の仕事とは異なり、世の中を変えるかもしれない新しい・独自の商品・サービスなどをいち早く生み出す可能性や、個性が強めの経営者と一緒に自分も事業も大きく成長できるという経験がしやすいのは中小企業の大きな魅力です。
それが求職者に伝わって、興味や熱意が高まっているタイミングを逃さないように、自社サイトから応募できるようにしておくことをおすすめします。ただし、こちらも今回の7つの中では、優先度を下げても比較的影響が少ないと考えられます。
限られたリソースで採用活動ができていますか?
中小企業にとって、採用のために避けるリソースは比較的限られている場合が多いです。採用に苦戦する理由のひとつといえるでしょう。リソースは、人的リソースをはじめとして、時間的・金銭的なものも含みます。採用担当者がいるとしても、専任ではないという場合も往々にしてあります。
そこで重要になってくるのが、そうした状況で、どのように採用活動を実施するかです。無料で求人を出せるハローワークは最初の選択肢といえるでしょう。忙しい中でも採用担当者は、定期的に企業説明会や人材とのマッチングイベント(オンライン・オフライン問わず)などへの出展をおすすめします。
SNSは、運用できる余力がある場合におすすめします。自社ホームページの情報を補完するものとして、使うようにしましょう。SNSは、日々情報が流れていってしまうため、見てほしい情報をくまなく見てもらえるとは限りません。その一方で、ホームページは、情報更新の頻度がSNSより低く、変化の少ない重要な情報を発信する役割を担うものです。
就活サイト・転職サイトや地域誌といった求人媒体の利用は、ここまでの準備が整った上で進めるとスムーズに運びます。経営者として事業をとおして実現しようとしていることや自分が伝えたいこと、求職者に求めることといった情報が整理されていれば、使う媒体によって内容と表現を調整するだけですむからです。
中小企業が抱える採用の課題
最後に、中小企業が抱える採用の課題を見ておきましょう。少し古いかもしれませんが、2018年12月に経済産業庁 近畿経済産業局が発表した「学生に響く中小企業の魅力発信」(http://1.l-ork.jp/security/up/report20181212.pdf)という資料があります。中小企業と学生との間の認識の違いが浮き彫りにされ、非常に参考になりますので、取り上げてみましょう。
- 中小企業のほうが、働く人の顔が見えて和気あいあいと仕事ができそうというイメージがある
- 大企業よりも自分の強みや能力が発揮できるのではないかという期待がある
- 企業規模にかかわらず、自分の好きなことややりたいこと、自分に合った仕事ができるかどうかを重視して就職先を選ぶ傾向がある
学生が就職先を選ぶ際にもっとも重要視しているのは、会社の「雰囲気」や「人間関係」だと報告されています。これが9割以上です。それとほぼ同じ割合で「自分に合った仕事ができるか」「やりたいことができるか」が約9割と続きます。企業規模が大きいことを重視するのは約半数です。学生は規模感をあまり重視していないということがわかります。事業規模が小さいから採用に苦戦するというのは、もしかすると中小企業側の思い込みなのかもしれません。
その一方で、就職活動にあたっての課題として、学生から挙げられているものを見てみましょう。
- 中小企業の情報が届きにくい
- 企業説明会に参加してほしい
- 中小企業で働いている人から実際に話を聞く場がなく、イメージが沸かない
学生側から改善してほしいという要望が出ている課題は、情報発信に関係することが多くなっています。学生側としては情報を求めているのに、肝心の中小企業側からの発信が少ないということになるのではないでしょうか。この点を、経営者としてどのようにお考えになりますか。
まとめ
今の時代、就職や転職に際して、ほとんどの人がネットで情報収集をしていると考えるべきです。中小企業が採用に苦戦するという現実がないとは言いませんが、情報発信を求職者から求められているという状況があるのですから、すぐに取り組みましょう。
今回ご紹介した7つのポイントを踏まえて、自社ホームページに採用情報を公開できれば、そのコンテンツが自ずと求職者にアピールしてくれます。自社の強みや魅力を伝える採用情報ページを構築して、ぜひ良い人材と出会う可能性を高めてください。