2024年版 中小企業白書のまとめ!DX推進の課題と対策とは?

2024年版中小企業白書で、DXへの取り組みが報告されています。中小企業のDXの取り組みや効果、課題が詳しく説明されていますが、ここでは要点をまとめました。また、この白書の情報を得て、中小企業経営者が考えなければならないことや求められている対応についても考えてみましょう。

中小企業にとっての2024年

まず、中小企業にとって2024年はどのような年だったのかを、DXに絡めて振り返ってみましょう。

新型コロナウイルスがインフルエンザなどと同じ第5類感染症に変更されたのは、2023年5月8日のことでした。コロナ禍が明けた翌年となった2024年は、多くの中小企業で売上が回復するものの、その一方で人手が足りないという現状が明らかになった一年だったといえるでしょう。

経営者応援コラムでも、何度か採用難や離職、定着向上について取り上げてまいりましたが、その中でも「中小企業は、かつて経験したことのない人材不足に直面している」とお伝えしております。

中小企業白書(以下「白書」)では、これまで女性や高齢者が人手不足を補ってきたものの、もう頭打ちだとしています。就業率はそれぞれに7割超、5割超に達し、生産年齢人口(15~64歳の人口)の減少もあいまって、さらに就業率を高めるのは難しいだろうと結論づけています。

では、女性や高齢者の次に来るものは何か。それがDXです。DXに取り組んでいるかどうか、どのように取り組んでいるかで事業の先行きが変わってくる。中小企業白書では、DXにはそういった価値があるとしています。

年々進むDXの取り組み

経済産業省がDXレポートを発表した年をDX元年と呼ぶならば、それは2018年ということになります。それから6年が過ぎ、DXの取り組みは進んでいます。白書で実態を確認しましょう。

デジタル化の4つの取り組み段階

DXの基本となるデジタル化には、4つの取組段階があるとしています。段階1から段階4に向けて取り組み内容のレベルが高くなっていきます。段階が高くなるほどDXを単純なデジタル化としてではなく、業務改革や新しい価値を創出する手段として活用できていることを意味します。後々、この取組段階によって得られる効果が異なるという分析が出てきますので、ここで見ておきましょう。

中小企業白書2024  デジタル化の4つの取り組み段階
中小企業白書2024年

広がる格差

2019年からの5年間で、DXへの取り組みは確実に進んでいることが白書からわかります。注目したいのは、段階3と段階4の取り組みの割合が増えている一方で、段階2はほぼ横ばいで推移しているという事実です。段階1は、この5年間で半減しています。

DXの取組段階が高いほど、「顧客データの一元管理・データ利活用」や「営業活動のオンライン化」といった付加価値を生み出す活動に取り組めているというのが、明らかにされています。

中小企業白書2024 DXに向けた取組内容
中小企業白書2024年

つまり、コロナ禍の3年余りを含むこの5年間で、着実にDXの取り組みを進めてきた企業とそうでない企業の差が表れているということです。電子化・ペーパーレス化や自社ホームページの作成は取組段階にかかわらず実施されている傾向にありますので、そこからもう一歩先に進めるかどうかが、DX推進のカギなのかもしれません。

DXに取り組むようになったきっかけ

ところで、DXに取り組むようになったきっかけは何だったのでしょうか。自社の場合はどうだったか思い出せますか。白書によると、もっとも多いのは「社内からの要望」です。「取引先からの要請」や「競合他社のDX推進の取組」と続きます。

中小企業白書2024  DXの取組のきっかけ
中小企業白書2024年

残りの結果を見てみても、書籍やセミナーなどの情報や周囲からの推奨、助言という選択肢が並んでいます。この結果を受けると、中小企業経営者はDX推進に消極的と見えてしまいます。それは、一体どうしてなのでしょうか。

その点については、この後のDXの課題で取り上げますが、その前にDXに取り組む効果やメリットに触れておきましょう。

DXに取り組む効果

DXといわれても、具体的な効果やメリットがわからなければ投資を決断できないという中小企業経営者の方もいらっしゃるでしょう。白書で明らかにされているDXの効果には、次のようなものがあります。

  • 業務効率化
  • 生産性向上
  • 人手不足解消
  • 新規事業(ビジネスモデル)の創出
  • 新しい顧客の獲得

段階2に該当するデジタルツールの導入やペーパーレス化は、電子化に対応した状態です。導入後は、業務効率化や生産性向上を実感できるでしょう。従業員一人ひとりの生産性が高まれば、人手不足の解消にもつながります。ここまでが段階3に該当します。

しかし、DXの本来の目的は、導入したデジタルツールを活用して自社ビジネスに利益を生むことです。それが、具体的には新規事業の創出や新規顧客の獲得であり、段階4の活動に取り組むことだといえます。

DXの取組が早いほど、付加価値の高い活動につながっているという指摘もあります。DXには早めに取り組んだほうがいいとわかっていながらも、なかなか進まない理由はどこにあるのでしょうか。

DXに取り組む際の課題

DXに取り組む際の課題も、白書で取り上げられています。早速見てみましょう。上位3つは、次のとおりです。

  • 費用負担
  • 人材不足
  • 情報不足
中小企業白書2024  DXの取組を進めるに当たっての課題
中小企業白書2024年

取組段階に関わらず、費用負担と人材不足という回答が多くなっています。DXに取り組んだほうがいいと分かっていても、費用や人材の関係で取り組めないという中小企業経営者の声が聞こえてくるようです。

次いで、「具体的な効果や成果が見えない」となっており、DXに取り組んだらどのような効果やメリットがあるのかという情報が伝わっていないという現状が一部にはあるとわかります。

DX推進に必要な支援

DX推進にあたって希望する対応策は、課題に応じる形で回答が並んでいます。

  • 補助金や助成金
  • 情報提供
  • 研修や人材育成
中小企業白書2024 DX推進のために期待する支援策
中小企業白書2024年

ここで注目したいのは、「専門家派遣」や「相談窓口」という回答が、段階にかかわらず一定数あるという点です。仮に資金や人材などの課題が解決されたとしても、推進そのものに対する専門家の支援が求められているといっていいでしょう。

DXには画一的な正解がなく、自社ビジネスに応じた最適解を求める活動を続けていくことが求められます。そこに、知見がある専門家の意見が必要だということでしょう。

DXを加速させるために今すぐできること

ここまで、DXの現状や課題、支援策をまとめた白書を見てきました。さまざまな課題に直面する中小企業経営者の方にとって、DX推進の次の一歩は踏み出しにくいのかもしれません。そこで、今すぐできることをいくつかお伝えしておきたいと思います。

  • DXを推進すると社内外に宣言する
  • DX担当部署や担当者を任命する
  • 専門家に相談する

「そんなことか」と思われるかもしれませんが、DXに取り組むきっかけは周囲からの働きかけが多かったと白書が示しています。経営者がやるといったら、社内外から取り組みがどのように進んでいるのかという注目が集まるようになりますので、自分自身を追い込みプレシャーを与えるという意味でも効果的でしょう。

その際には仲間を作っておくことをおすすめします。一緒にDXに取り組む部署や人材を任命しておくのです。一人ではなかなか進まないことも、チームで取り組むことによって課題解決やモチベーション維持などに、良い影響を与えることが期待できます。

そして、専門家への相談です。白書から、デジタルツールを導入した後のDX進め方がわからない中小企業が多いのではないかと推測できます。もしそうであれば、そのように迷っている時間を、ぜひDX推進へと振り向けていただきたいところです。

まとめ

2024年版中小企業白書の報告では、DXの取り組みはまだまだ途上段階にあるということがわかりました。DXの必要性を理解していながらも、費用や人材面でなかなか踏み出せずにいる中小企業が多いことも読み取れます。

今回お伝えしたかったのは、そこで立ち止まらないでいただきたいということです。早くDXに取り組み始めるほど、受け取る付加価値が高くなると指摘されています。自力での打開が難しいと感じる際には、専門家の力を借りてください。

弊社では、助成金のご案内を含めて、個別の企業に応じたDX推進策のご提案が可能です。ご連絡をお待ちしております。

2024年版中小企業白書

 第1部 令和5年度(2023年度)の中小企業の動向 > 第4章 中小企業・小規模事業者が直面する課題と今後の展望 > 第7節 DX(デジタル・トランスフォーメーション)

https://www.chusho.meti.go.jp/pamflet/hakusyo/2024/chusho/b1_4_7.html

この記事を書いた人

吉野 太佳子代表取締役|中小企業診断士 , MBA , 上級ウェブ解析士 , Google アナリティクス認定資格

Webブランディングの専門家として、中小企業・小規模事業者さまをご支援させていただきます。

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