従業員が情報発信するメリット・デメリットと注意点とは?

近年、従業員による自社の情報発信が活発になってきています。現在はSNS全盛期ともいわれていますが、そうした中でも情報発信をしていない中小企業が少なからず見受けられるのも事実です。そこで今回は、情報発信を始めるきっかけとなるよう、従業員による情報発信のメリットとデメリット、注意点について見ていきましょう。

従業員が情報発信するメリット

従業員が自社についての情報発信をすることには、いくつものメリットがあります。具体的にどのようなものがあるか見てみましょう。

企業としての信頼性の向上

従業員による情報発信は、企業の信頼性を向上させます。通常は、企業の経営者や広報・人事などのような部署が企業の情報発信を担い、経営者は代表メッセージやご挨拶を、広報はニュースリリースやトピックスを、人事は採用情報を発信します。その一方で、そういった公式な情報には人間味や親近感、現実味が感じられないということも否めません。

そのように、従来情報発信を担ってこなかった部署の従業員が情報発信をすると、従来のような何度も見直されたミスのない完璧なメッセージではなく、従業員のリアルな声として受け取られるというのが特徴です。

その会社で働く従業員が何を思い、どのようなことを感じながら日々業務に取り組んでいるのかは、公式情報からはなかなか出てこない情報だといえます。そのような情報発信が許されていること自体、外部からの信頼性を高め、企業の透明性を示すことにつながるといえるでしょう。

社内の雰囲気や社風のアピール

社内でも業務として外部への情報発信をしない部署に所属する従業員が情報発信すると、社内の雰囲気や社風といった日常の業務風景を知るための情報としてアピールすることも可能です。

社風や会社の雰囲気は、就職先や転職先を探す際に重要な要素になっているとお伝えしました。それに加えて前項で触れたとおり、広報や人事といった従来情報発信をしている部署からの情報よりも、よりリアルな情報として受け取ってもらえるという意味で求職者にとっては有益な情報となるでしょう。

就職や転職活動では、口コミも大切な情報のひとつです。今やネット上には、その企業に勤めたことのある人が実際にその企業はどうだったかという口コミをネットに書き込む時代です。入社した従業員全員にとっていい会社であることは難しいでしょうが、少なくとも自社の口コミがネット上に残る時代だということを意識したほうがいいのかもしれません。

顧客との関係強化

従業員が情報発信することにより、従業員と会社の信頼関係が構築されていることを経営者自身が行うよりも客観的に発信できます。社内の雰囲気が良好であれば、顧客や取引先をはじめとする社外関係者にも良い印象を与えることができるでしょう。

そもそも従業員との関係が良好でなければ、発信を引き受けてくれる人材は見つからないでしょう。会社側としても、発信は誰にでも任せられる業務ではありません。従業員に発信を任せられるということ自体が信頼関係の証といえます。

発信を通じて業界や商品・サービスに対する専門知識の豊富さや技術の高さ、従業員の誠実さや人柄などが伝われば、顧客との信頼関係強化につながります。そのような会社は、社外はもちろんのこと社内にもポジティブな影響をもたらすでしょう。

エンゲージメントやモチベーションの向上促進

情報発信を担当する従業員を設けると、社内のエンゲージメント向上を期待できます。従業員による情報発信は、社内のコミュニケーションを活性化させるだけでなく、日常のリアルなストーリーが社内外の共感を呼ぶでしょう。

従業員が情報を発信することによって、社内の対話が生まれやすくなります。会議とは違うより自然な形でのコミュニケーションが可能で、商品・サービスや会社に対する思い入れを深めていくことも可能です。

従業員のリアルでリアルタイムな声を通じて会社の文化や価値観が伝わると、社内外のユーザーから共感を得やすくなるでしょう。そういった発信の積み重ねによって、エンゲージメントは向上していきます。

また、従業員が自社の情報を発信することにより、自分が会社の一部であるという認識が高まるだけでなく、周囲から注目される機会も増えるでしょう。そのことから、担当者本人だけでなく、周囲のモチベーション向上も期待できるでしょう。

ブランドの認知度や親しみやすさの向上

従業員が発信することによって、ブランドの認知度や親しみやすさも向上します。それぞれの企業には、企業イメージやブランドイメージがありますが、従業員の個人的な視点やストーリーから共有することで、新たなユーザーに情報が届く可能性が高いからです。

経営者や広報、人事などからの発信にはあまり興味を示さない従業員でも、個人的なつながりがあれば興味を引くことも可能です。情報発信を担当する従業員の社内や社外ネットワークを通じて、会社からの重要なメッセージを伝えることも可能です。

社外に対しては、商品・サービスの詳細だけではなく、企業文化のアピールにもなります。「我が社の社風はこうです」と言葉や動画で説明するよりも、継続的な情報発信のほうが信頼してもらいやすいといえます。

従業員が情報発信するデメリットと注意点

従業員が情報発信するメリットがある一方で、デメリットや注意点があることも認識しておかなければなりません。

ブランドイメージを保つ難しさ

各従業員が情報発信することで、ブランドイメージの統一感が失われる可能性があります。ブランドには、企業や商品などのブランドイメージだけでなはく、ブランドメッセージもあります。

複数の従業員に発信を任せている場合には、個々人の理解や解釈によって、ブランドイメージにそぐわない内容が発信されてしまうかもしれません。そのような事態を避けるには、情報発信のガイドラインを設けたり、研修を実施するなどして、適切な情報発信を促しましょう。

機密情報の漏洩や個人情報の流出

従業員が意図せず機密情報や内部情報、個人情報を公開してしまうリスクがあります。担当者本人に悪意がなかったとしても、万が一機密情報や個人情報などを流出させてしまうと、企業としての信頼を揺るがしてしまいかねません。

利権が関係する情報や作品などには、法的措置が講じられる可能性がもありますので、その点についてのリスクや対応を含めて、事前によく研修しておきましょう。なお、従業員が自分自身の個人情報をうっかり公開してしまわないようにする指導やチェックも欠かせません。

炎上などのトラブル

何が原因で炎上したのかにもよりますが、従業員の発信が原因で炎上してしまうと、対応に追われるのはもちろんのこと、企業としての社会的信頼を失ったり、ブランドイメージを傷つけたり、売上に影響したりするなどのリスクがあります。

原因には、コンプライアンスや倫理的な観点から見た不適切な言動や誤った情報の拡散、社会的に慎重に対応すべき課題に対する極端な発言などが挙げられます。感情的な対応をしてしまうと、火に油を注いでしまいかねませんので、そうした事態が起こった際の対処も考えておきましょう。

情報発信にかかるコスト

従業員の情報発信には、開始前の準備や開始してからの運用にかかるコスト、万が一のトラブルに対応するためのコストなどがかかります。

開始前には、情報発信のガイドライン作りや担当者選び、研修の実施が必要です。開始してからは、発信内容選びや反応の確認に加えて、担当者の負担が増えすぎていないかにも注意が必要です。もし炎上となれば、沈静化をはじめとして、謝罪や説明、再発防止策を講じるといった対応が求められるでしょう。

金銭面の負担だけではなく、労力面でも長期的に運用していけるかを確認することが大切です。

求められている中小企業からの情報発信

前回のコラムでお伝えしたとおり、中小企業からの情報発信が求められています。「中小企業はイメージがよくない」というのは中小企業側の意見であり、学生側は就職先として中小企業を考えているものの、得られる情報が少ないという課題に直面しているとお伝えしました。

今回お伝えした従業員による情報発信は、前回の課題解決にもつながる対策だといえるでしょう。「募集しても応募がない」「採用したくても良い人材と出会えない」「学生は中小企業に興味を持たないだろう」というのは、情報発信によって改善していける経営課題です。

少々厳しいことをお伝えするようですが、発信しなければ誰かに見つけてもらうことさえできません。かつてないほどの人材難を乗り越えるための施策のひとつとして、ほかの中小企業が取り組み始める前に発信を始めましょう。

これからは発信力が求められる時代に

従業員による情報発信をおすすめするのは、何も採用面で有利だからということだけではありません。これからは、どの企業や人材にも発信力が求められる時代になっていくからです。

経済産業省の「『人生100年時代の社会人基礎力』とは」によると、チームで働く力の最初に発信力が挙げられています。チームで働く力とは、会社で働く力と言い換えることができるでしょう。2006年に提唱されたものですが、古びることなく今後も求められるものであることが分かります。

発信力は、一朝一夕には獲得できません。誰に何を伝えたいのかを意識して、必要な情報を組み立てるという考え方が必要ですし、日々の発信を通じて工夫やノウハウを蓄積していく必要があります。

改めてお伝えするまでもないのかもしれませんが、今や商品やサービスを購入する前だけではなく、どこかに行きたいときや何かを食べたいとき、何かを調べたいときなど、日常のあらゆる場面で、ネットを利用して比較検討するのは常識になりつつあるといえます。

そのような状況の中、ネットという大海原で自社を発見してもらうには、少なくとも土俵に上がっていなければなりません。まだ手つかずという場合は、まずそこから取り組みましょう。

継続した先に見える成果

SNSを含むWebでの情報発信には、成果が上がるまでに一定の時間が必要です。長く続けていくことで、少しずつ認知され成果を上げていくという性質のものだとご理解ください。即効性が期待しにくい一方で、効果をあらわすようになったらコンテンツ自体が成果を上げるようになります。

コツコツと積み上げていく情報発信は、先の見えないトンネルくぐるようなもので、ときには効果を信じられなくなることもあるかもしれません。しかも、成果を実感できるタイミングは企業によってさまざまです。

残念なことに、成果を見る前に諦めてしまう経営者の方が少なからずいらっしゃいます。その点については、ローリスクの反面、時間がかかる投資と考えていただきたいところです。無理なく継続できる方法をご一緒に模索していくよりほかないのかもしれません。

まとめ

今回は、従業員による情報発信のメリットとデメリットを見てきました。主なメリットは、会社や商品・サービスについて知ってもらうことで、一方のデメリットは、発信するからこそのリスクやトラブルだといえるでしょう。

挑戦せずにする後悔は後悔にしかなりませんが、挑戦した上での後悔は経験やデータとして今後に役立ちます。

これからの時代は、どのような企業にも発信力が求められる時代になっていくと予測されています。これまでの経験から、資金や人員に余裕がない中小企業ほど、効果が感じられるまでに時間のかかる施策を避ける傾向があるように見受けられます。

資金面で不安がある場合や人員に余裕がない場合には、ぜひ一度ご相談ください。貴社のビジネスがどのようにすれば売れるのかをご一緒に考えてまいりたいと考えています。

この記事を書いた人

吉野 太佳子代表取締役|中小企業診断士 , MBA , 上級ウェブ解析士 , Google アナリティクス認定資格

Webブランディングの専門家として、中小企業・小規模事業者さまをご支援させていただきます。

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