「生成AIを導入・活用したいものの、すべてを任せるのは不安」といったお声をいただくことが多くなってきました。そのような課題の対策として、Webブランディングがあります。AI活用が広がる中、今回はなぜすべてAIでOKとすると危険なのか、Webブランディング戦略が必要なのかついてお伝えします。
目次
生成AI時代に広がる漠然とした不安
冒頭で取り上げた生成AIに対する漠然とした不安は、生成AIの普及とともに広がりつつあるようです。導入したいものの踏み切れない、情報の精度に不安がある、セキュリティが心配といった声があります。
帝国データバンクの調査では、生成AI活用の懸念や課題は「運用の人材・ノウハウ不足」という回答が54.1%ともっとも多くなっています。それに次ぐのが「情報の正確性」で41.1%です。
東京商工リサーチの調査でも、生成AIの活用を推進しない理由として挙げられていたのは、「推進するための専門人材がいない」で55.1%でした。「活用する利点、欠点を評価できない」という理由も43.8%と多く、生成AIに関するノウハウや人材不足が課題となっていることが浮彫になっています。
知らないということは不安を呼び起こしやすく、冒頭のような「よくわからないから導入や活用に対して消極的」という状況を生み出しているといえるでしょう。経営者であれば、日和見を続けるのが得策ではないときもあることをおわかりでしょう。
考えなければならないのは、ますます進む生成AI時代において、どのような対策を講じれば生成AIを活用できるかということです。
帝国データバンク「生成AIの活用状況調査」
東京商工リサーチ「TSRデータインサイト・2025年「生成AIに関するアンケート」調査」
https://www.tsr-net.co.jp/data/detail/1201667_1527.html
生成AI活用が広がる中、なぜ役割分担が重要か
生成AIを導入・活用しようとするときに重要になるのが、生成AIと人間との役割分担です。生成AIは大変便利なツールではありますが、利用に際して注意が必要な点もあります。
- 情報の品質(正確性や専門性、新しさなど)
- 法的リスク
- ブランド価値の創造
情報の品質
情報の品質とは、その情報が信頼に値するものかどうかを指します。例えば、情報の正確さをはじめとして、専門性や新しさといった基準があり、このような条件を満たす情報が、信頼性の高い情報だといわれます。
しかし、現時点の生成AIでは、そのような情報品質の要となる信頼性の基準を十分に満たしているとはいえません。学習データの質や量だけではなく偏りの問題や、文化差などからくる認識の違いなどを含んでいる可能性がないとはいえません。故意であるかは別として、誤った情報も存在することを考えると、万全とはいえない状態です。
また、学習データの情報がいつ時点のものなのかによって、情報の精度が変わってきます。最新情報に対応しにくいというのも、生成AIが持つリスクのひとつです。
人間からの指示(プロンプト)に応じて生成する情報についても、ハルシネーションを起こすことが指摘されています。ハルシネーション(英語:hallucination「幻覚」)とは、事実に基づかない情報をあたかも事実かのように返してしまうことです。生成AIは、もっともらしい嘘をつく可能性があることを忘れないようにしましょう。
法的リスク
生成AIに関する法律が整備されて間もない現状を考えると、生成AIとの役割分担を考えずに業務を任せてしまうことには、法的リスクがあると言わざるを得ません。
2025年9月1日に、日本で初めてとなるAI関連の法律「AI法(人工知能関連技術の研究開発及び活用の推進に関する法律)」が施行されましたが、企業やビジネスを支える生成AIの活用が可能な人材育成が主な目的で、罰則規定はありません。
つまり、現状としては、従来からある著作権や個人情報保護法に違反しないよう活用していく必要があるということです。
- 著作権
- 個人情報保護法
著作権や肖像権といった著作権では、生成AIが既存の著作物を学習することが著作権や肖像権の侵害に当たらないのか、また生成AIが作り出した著作物は著作権による保護対象になるのかといった議論があります。
個人情報保護についても注意が必要です。顧客や従業員の個人情報、企業戦略、まだ発表されていない商品、サービス情報といった機密情報を入力することで生成AIが学習してしまったり、第三者に情報が流出してしまうリスクが指摘されています。
現時点での生成AIでは、個人情報保護に十分に対応できているとは言いがたいです。個人情報や機密情報は生成AIに入力しないことが推奨されていることからも、情報漏洩のリスクを念頭に置いて活用することが必要です。
ブランド価値の創造
そのような状況で、生成AIを用いて企業や商品、サービスなどのブランド価値を高めていくには、人間による戦略立案や情報発信の方向性、コンテンツの内容確認や調整といった作業が不可欠です。
前述した著作権や個人情報保護に関する法律に抵触していないかといった判断や内容がブランドに沿っているものかどうかという確認も必要だといえます。ブランディングは、顧客のニーズや生活スタイルの変化などを受けて更新していく必要がありますので、そういった判断や調整は人間にしかできません。
生成AIが得意なのは、学習済みのデータをもとにした最大公約数ともいえる「それらしい」「もっともらしい」コンテンツの生成です。戦略や計画に基づいた作業を担うのは得意ですが、既存のブランド価値の向上や将来の方向性も含めたブランディングそのものを生成AIが代行することはできません。
昨今では、SNSを含むWebブランディングが利益に大きく影響するといわれています。スマホ時代のブランド戦略として、Webブランディングはどの企業にも不可欠です。特に広告宣伝費用を抑えながらブランド価値を高めていきたい中小企業にとっては、重要な課題だといえるでしょう。
生成AIと人間との役割分担について
生成AIが含むリスクを踏まえた上で、どのように役割分担をすべきか具体的に考えてみましょう。生成AIが得意とする作業で、生成AIに任せても問題ない部分だともいえます。次の5つを取り上げてみましょう。
- 情報収集や整理
- アイデア発想
- クリエイティブ制作
- 品質管理
- 顧客対応
情報収集や整理
生成AI:市場調査、競合分析、キーワード抽出、データ可視化など
人間:調査範囲の設定、情報の信憑性判断など
生成AIに任せたいのは、市場調査や競合分析といった作業です。公開されている資料やデータを読み込ませ、市場や競合についての情報収集や整理、分析をさせることであれば、生成AIがその力をいかんなく発揮するでしょう。
Webブランディングには、ブランドイメージを言葉で表すという作業があります。そのイメージに沿うキーワードを選び出し、どのキーワードで自社商品やサービスを見込客に見つけてほしいか設定するのですが、そのようなキーワードの抽出もAIなら迅速です。
その一方で人間は、生成AIに調べさせたい範囲を設定したり、生成AIが返してきた情報に信憑性があるかどうかを確認し判断したりするという役割を負うと良いでしょう。
アイデア発想
生成AI:多様なコンセプト・切り口を短時間で提示など
人間:方向性の決定、ブランド方針との整合性判断など
アイデア出しや新たな発想、着想を得たい場合も、生成AIを活用することをおすすめします。人間が数時間かけて探し出したり考え出したりするコンセプトや切り口、視点などを、生成AIが大幅に短縮できるからです。
それまでのパターンや事例を踏まえて、従来の商品やサービスになかったアイデアを提示してくれる可能性があります。市場や業界、社内の常識、通例などに捉われない知識や考え方を合わせて、短時間でアイデアの種を提供できるでしょう。
情報収集のところでもお伝えしたとおり、人間の役割はブランドや発信するコンテンツの方向性の決定に加えて、生成AIによって作り出されたコンテンツがブランドイメージやWebブランディング戦略に即しているかを判断することです。
クリエイティブ制作
生成AI:文章初稿・画像素材生成、複数バリエーション作成など
人間:トーン&マナー調整、ブランドストーリーの追加など
クリエイティブ領域でも、生成AIを活用できます。生成AIは、商品名やキャッチコピー、文章といった文字情報であればニュアンスや文体の違いを、写真やイラストといった画像であればトーンや色味、タッチの違いを短時間で生成可能です。人間に発注するよりも低コストで、多彩なバリエーションを比較検討できるという点において優れています。
人間がやるべきは、生成AIによって生み出された情報とWebブランディングを含むブランド戦略との整合性を確認することです。ブランドには、大切にしている価値観や世界観、伝えたいメッセージやストーリーなどがあります。そういったブランドとしての文脈や文化的背景を含めた総合的な判断は人間にしかできないでしょう。
品質管理・リスク判断
生成AI:表記揺れチェック、基本的な事実確認など
人間:微妙なニュアンスや倫理判断、著作権など
品質管理やリスク判断という点において、生成AIが担うべきなのはルールに基づく確認作業だといえます。対象が文章などの文字情報であれば、表記揺れ(「時」と「とき」のように、同じ言葉にもかかわらず違う書き方をしていること)や文法ミス、プログラムのコーディングなどが挙げられます。
オープンデータを用いて、簡単な事実確認をさせることも可能です。生成AIが返してきた結果の根拠がどこにあるかを探させるという使い方です。生成AIが見つけた情報に信憑性があるかどうかは、人間が判断します。
また、文章の微妙なニュアンスや言い回しなどが適切かどうかは、人間にしかできません。ブランドと社会通念や文化的背景、その時々の社会情勢といった複数の要素を考え合わせてコンテンツを調整するのは、人間の役割です。
著作権を侵害していないか、個人情報保護法に抵触していないかどうかという判断も、人間にしかできないものだといえるでしょう。既存の作品に酷似していたり、模倣と指摘される可能性がないか、個人情報の流出につながりかねないかといったリスク管理には、倫理的な判断が求められるからです。
顧客対応
生成AI:FAQ、一次問い合わせ対応、初期提案など
人間:高額商談、長期関係構築、最終提案など
生成AIの得意分野を活かすことを考えると、顧客対応については問い合わせデータをまとめ(要約)させたり、その対策を提案させるといった作業が適しているといえます。
具体的には、お客様から寄せられた質問をFAQにまとめさせるという作業やチャットボットによる一次対応などが挙げられます。要望や意見などについて、提案させるのも良いでしょう。
人間はといえば、生成AIに回した業務でできた時間を、複雑かつ高度な内容の商談や中長期的な関係性の構築に注力することが可能です。生成AIが収集、整理した情報を参考にし、お客様への最終的な提案をまとめるといった作業は人間にしかできない部分だといえます。
生成AIと人間は助け合う関係が望ましい
ここまで見てきたように、生成AIと人間とには、それぞれに得意分野があります。役割分担をすることで、互いに助け合う関係性が望ましいといえるでしょう。
人間には、単純作業に飽きやすかったり、繰り返し作業でミスを起こしやすいといった特徴があります。忙しさや体調などによっては、不注意から生じる間違いもあるでしょう。
その一方で生成AIは、指示されたことに対して必ず結果を返します。人間のような感情や体調不良もなく、通年文句を言わずに黙々と作業をこなすことができるのは、人間にとってありがたいことだといえるでしょう。
どちらが優れている、いないという議論ではなく、互いの特徴を踏まえ得意分野に応じた役割分担をするというのが理想的な利用方法ではないでしょうか。
まとめ
生成AIにできることが刻々と増えていく中、生成AIにすべてを任せるか否かという考え方は、情報の品質や法的リスクだけではなく、Webブランディングなどの点からリスクが高いとお伝えしました。
生成AIは、学習したデータに基づき、人間から与えられた指示に対して結果を返すという働きをします。
Webブランディングにおけるブランド構築そのものや戦略の立案、適正なコンテンツかどうかの判断といった、ブランドの舵取りは人間にしかできません。
Webブランディングに興味はあるものの、「大変そう・難しそう」「人材不足」「ノウハウがない」といったお悩みを抱える中小企業にとって、生成AIの活用は作業面での負担改善に役立ちます。
今回お伝えした人間と生成AIとの最適な役割分担の例を参考に、取り組んでみましょう。