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コロナ禍で過去最高を記録した女性の起業
日本金融政策公庫の調査によると(「2020年度新規開業実態調査」(日本金融政策公庫) https://www.jfc.go.jp/n/findings/pdf/topics_201119_1.pdf)、コロナ禍の影響で起業する人が増えていることが分かりました。
注目したいのは、女性の起業が過去最高を記録したことです。起業者のうち女性が占める割合は21.4%となりました。1991年の調査開始時には12.4%、その後の10年間は13%前後で推移し、2013~14年にかけて15~16%台に乗ると、2018年には19%台を突破、2020年に21%を超えました。
全体的な状況も確認しておきましょう。
開業直前の職業が「正社員・正職員」だった人(管理職と管理職以外の合計)が69.3%を占めていることから、起業者の多くが会社員からだったという実態が見えてきます。退職理由は、解雇や倒産、事業縮小・撤退など会社都合によるものが7.4%で、自己都合が87.9%です。
自己都合で退職した人の詳しい退職理由(複数回答)を見ていくと、もっとも多かったのは「自由に仕事がしたかった」の56.5%、「仕事の経験・知識や資格を生かしたかった」が45.8%、「収入を増やしたかった」の41.9%と続きます。
開業時の年齢は40歳代がもっとも多く、40歳代の38.1%と30歳代の30.7%とを合計すると68.8%です。開業時の平均年齢は43.7歳と、こちらも調査開始以来もっとも高くなっています。
現在の事業に決めた理由は、「これまでの経験や技能を生かせるから」が41.8%ともっとも多く、会社員でのキャリアを生かして起業することが、年齢を押し上げる要因のひとつと考えられます。
このことから分かるのは、「コロナ禍の影響で自らの意思により退職を決めた人が、自分の経験や技能を生かしてもっと自由に仕事をするために起業した」ケースが多いということです。コロナ禍にあり、働き方を見直す人が増えていることは間違いないといえるでしょう。
女性の場合、結婚や出産などのライフイベントも働き方に少なからず影響を与えます。ワークライフバランスを考えるとき、起業という働き方を選択する方が増えることは、起業を経験した身として嬉しい限りです。
女性の起業でも重要な課題とされる販路開拓
創業のきっかけはともかく、事業者になったからには事業で成果を上げていかなければなりません。起業時にはさまざまな課題がありますが、その中でも重要とされているのは、集客と経営です。
前述の日本金融政策公庫の調査でも、「顧客・販路の開拓」と「財務・税務・法務に関する知機器の不足」を課題として挙げる経営者は多くなっています。「顧客・販路の開拓」は開業時で46.8%、現在の課題としても47.3%と約半数で、2人にひとりが経験する計算です。事業を継続する上での重要な課題といえるでしょう。
同調査で、今後の方針に売上高と商圏の拡大を上げる人が多いことからも、顧客や販路の開拓がいかに重要か分かります。売上高の拡大は89.9%、商圏の拡大も55.1%と半数を超え、事業の生命線であることを示しているといえます。
その一方で、経営コンサルティング事業者として、これまで数多くの事業者様をサポートさせていただいている立場から、ひとつ申し上げたいこともございます。それは何かというと、販路開拓に重要な市場設定をあいまいなままにしているケースが多く見られるということです。
市場設定があいまいだと、販路開拓でつまずいた際に、何をどのように改善すればいいのか分からなくなってしまう可能性があります。その意味で非常に重要にもかかわらず、よく考えずに決めている方が多いのも事実です。
販路開拓に必要不可欠なのにあいまいな「市場設定」
市場設定とは、自社事業のお客様を設定することです。起業時には必要不可欠なのですが、この点は多くの方が難しいと感じる点ともいえます。市場設定が分からないからと適当に設定したり、決定した後にニーズの深堀りをしなかったりというケースが散見されます。
まだお客様がいらっしゃらない状態で、何をどのように設定するのかというところに違和感を覚えるのでしょう。しかし、起業する際には、お客様が来てから考えるのではなく、来てくださりそうなお客様(=ターゲット)をあらかじめ設定しておくことが必要です。ただお客様を待つのでは、あっという間に運転資金が底をついてしまうでしょう。
ターゲットを設定するということは、このようなお客様なら自社事業の商品またはサービスを購入してくださるという仮説を立て、その仮説が正しいかどうかを検証することにほかなりません。
最初から上手くいかないこともあるでしょう。実際に購入して下さったお客様と仮説が大きく異なっていれば、それを修正するという作業が必要になります。トライアンドエラーを繰り返しながらターゲットを絞っていくことが販路開拓の近道です。
ターゲットと相思相愛になることを目指しましょう。どのような事業であっても、自分自身を評価してくださる方がターゲットになるということに変わりはありません。
まとめ
コロナ禍はさまざまな影響を及ぼしていますが、女性の起業もその中のひとつといえます。この厳しい状況にありながらも、起業という選択をした、またはこれからする予定の方々には、本当に頑張っていただきたいと思います。
起業することは簡単ではありませんが、どちらかというと起業した後のほうが本番といえるでしょう。販路開拓は営業を続ける限りついて回る課題ですから、難しそうだからという理由で市場設定(ターゲットの設定と仮説の検証)を避けるのは得策ではありません。
そこで次回は、販路開拓の助けになるペルソナをご紹介します。