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食品および生活雑貨というよくあるビジネスを際立たせたネーミング
食品および生活雑貨の企画販売をおこなう事業者が制作した雑穀パウダーと聞いて、どう思われますでしょうか?これだけでしたら、よくある会社のミックスパウダーだという印象かもしれません。ではここで、「はこびどり」の「香ばしパウダー」と聞くといかがでしょうか?今回、事例としてご紹介するのは、屋号「はこびどり」様の「香ばしパウダー」という商品です。はこびどり様のサイトに入ってくる方の大半が「はこびどり」で指名検索されています。商品名「香ばしパウダー」も商品の特徴がよく表現されていますが、秀逸なのは屋号の「はこびどり」です。一度聞いたら忘れない名前ではないでしょうか。
事業や商品自体は決して珍しいものではありませんので、わかりにくいネーミングや競合他社の商品とかぶるネーミングだったら、お客様に見つけてもらえなかったかもしれません。
食品や生活雑貨を取り扱う事業者は規模の大小もさまざまで数も多く、商品名も雑穀パウダーやミックスパウダーなど、類似するものが非常に多く見受けられます。そのような中で際立つ個性を発揮する理由を、前回お伝えしたネーミングの4つのコツから見てみましょう。
指名検索につながった屋号と商品のネーミングの特徴
ネーミングのコツとして、前回4つのポイントをお伝えしました。それは、①読み上げやすさ、②パッと見のインパクト、③短くまとめる、つまり、④お客様にとっての覚えやすさを大切にすることでした。「はこびどり」というネーミングは、一息の中でスッと言い終えることができます。濁点(「び」と「ど」)は強弱を生み、①の読み上げやすさが考慮されているといえます。②パット見のインパクトについては、名前がすべてひらがなのため、初めて見る方には意味がわかりにくいでしょう。「はこ びどり」なのか「はこび どり」なのか。これが屋号に対する興味を喚起し、意味を知ったときの納得感、そして覚えやすさにもつながっています。③短くまとめるという点でも5文字の中に屋号に対する思いが詰まっています。(屋号に込める思いについては、この後にご説明します)総合的に見て、お客様にとっての覚えやすさは抜群、かつインパクトもあるという仕上がりになっているという点が素晴らしいです。
屋号「はこびどり」は、事業主様が鳥好きでいらっしゃること、その鳥が日々の生活を豊かにする大切なもの(商品)をお客様に「はこぶ」ことを非常によく表現していらっしゃいます。雑穀は鳥の糧でもあり、その点でも事業と商品と鳥がリンクするという多重構造になっています。
食品や生活雑貨の世界では、かっこよさを狙う屋号が少なくありません。事業に対する思いや商品をとおしてお客様に提供する価値に焦点を当てるものが多い中、はこびどりはお客様へ商品をお届けすることそのものに着目している点でも、その独自性を高めているといえます。
■屋号「はこびどり」のネーミングの特徴
・「び」と「ど」という濁音によって音に変化がある・パッと見ると意味が分からないが、それが屋号への興味を喚起している
・5文字の中に屋号に込める思いを短くまとめている
・屋号の意味の納得感もあり、記憶に残すという点でも覚えやすい
次に、商品名「香ばしパウダー」について見てみましょう。市場には、雑穀パウダーや焙煎パウダー、焙煎雑穀パウダーなど、似たような名前の商品が数多く存在します。よく見て見ると、雑穀の中でもその中のひとつにフォーカスしたものや、焙煎という特徴を打ち出したものなどが多いことに気づきます。
「香ばしパウダー」にも焙煎大豆が使われていますが、「焙煎」ではなく「香ばしい」と味を表現したことがほかにはない独特の視点です。そのことによって香ばしいという味を表現しているだけではなく、焙煎をイメージさせることに成功しています。
■商品名「香ばしパウダー」の特徴
・「い」を取り「香ばしパウダー」としたことでリズム感が生まれている・雑穀や焙煎が強調されがちだが、その中で香ばしさに着目し、味と焙煎を同時に表現している
リアルとネットを上手に活用した導線で指名検索率を上乗せ
はこびどり様の指名検索の多さは、ネーミングだけではありません。お客様に指名検索をしてもらえるような導線を引いていることも、理由のひとつです。百貨店やマルシェなどに出店し、詳しく商品説明をしながら販売されています。もともとの商品がいいものなので、そのおいしさからネット検索で購入という流れが完成していることも、指名検索に結びついているのです。さらに、はこびどり様のお客様が、この香ばしパウダーを使ったレシピをInstagramにハッシュタグ「#はこびどり」をつけて多数公開してくださっています。ドリンクやスイーツ、隠し味など実にさまざまです。幅広いアレンジが楽しめる商品ではありますが、販売から購入、購入後と全体としていい流れになっており、ブランディングが上手くいっている事例ともいえます。
余談ですが、利益の一部を野鳥保護活動に寄付するなど野鳥の会とも関わりを作られたり、おうちの中で鳥を放し飼いされたりと、鳥への愛があふれているユニークな方です。
まとめ
はこびどり様はそのネーミングの素晴らしさから指名検索を獲得している好事例です。ネーミングのコツから見ても、考え抜かれたと分かる屋号に加え、商品名も工夫が感じられるものになっています。販売からネット検索、購入、その後のアレンジレシピというビジネスの一連の流れがいいこともブランディングを成功へと導いています。ネーミングは、いずれその名前で知られ、呼ばれることになる屋号や商品、サービスなどを構成する大切な要素のひとつです。もっとも重要なことは、お客様にとって親しみやすく、覚えやすいこと。その点を忘れずにネーミングを考案して、指名検索につなげていきましょう。
はこびどり様
https://www.hakobidori.com/index.html