検索すればいつでも欲しい情報にたどり着けるネットの世界には、記録だけでなく記憶すら必要とされないという厳しい現実があります。それは、作り手(売り手)にとってマイナスでしかないのでしょうか。そのような状況でもお客様に記憶してもらうにはどのようにしたらよいのかということについてお伝えします。
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記録を必要としないウェブ市場での記憶のあいまいさ
ウェブ市場では、ネット検索が進んだことによりお客様は記憶することも、必要ではなくなっています。かつてよく耳にしたブックマークも、この頃では利用しない方が多いと聞きます。特にスマホでは画面が小さく、ブックマークの中からお目当てのものを探し当てる手間よりも、直接検索をしてしまうほうが好まれているのかもしれません。
常に検索をすればいいということは、常に代替品にとって代わられる可能性があることを意味します。つまり、お客様は、その時々の条件でヒットしたものの中から最適なものを選ぶということです。それは、すぐに買わなければならないのか、必要な数量が揃っているのか、たまたま安くなっていたからなのかなど、まちまちでしょう。
そもそも人の記憶はあいまいだといわれています。かつてGoogle社がおこなったという記憶についての実験では、見たはずのCMを見ていないと回答する人や見ていないはずのCMを見たと回答する人もいたことが報告されています。
記録によって人の記憶のあいまいさが証明されてしまったともいえるのですが、忘れることは人が生きていくうえで欠かせないことだからといわれています。ご参考までにお伝えしておきます。
記憶されない代わりに得ているものとは?
話は変わりますが、年間に何回くらい検索されているかご存知ですか。Google社は検索回数を公表していませんが、あるアナリストによると、2016年の時点で年間2兆回以上もおこなわれ、年々増加する傾向にあるそうです。
その数を単純に365日で割ると1日当たり54億8千万回という数になります。仮に地球上の総人口78億人(2019年度「世界人口白書」)が検索できると仮定すると、1人1日当たり7回という回数になります。検索できる端末の普及率が地域によって変わることを考えると、1人当たりの検索回数はもっと多いはずです。
検索回数の多さが意味するのは、覚えてもらえる可能性が低くなり続けているということだけではありません。回数が増えたことそのものには、検索結果として画面に登場する機会、つまりお客様との出会いのチャンスが増えているともいえます。
いまやお客様は、ネットで検索をしてから商品やサービスを購入するという時代です。ネットで下調べをし、購入するものをあらかじめ決めてから購入するといわれます。コロナ禍もあり特にその傾向が強くなっているといえますし、前回のコラムでも触れたEC市場の大きな伸びはその証といっても過言ではないでしょう。
このような状況にあり、経営者の方にぜひお考えいただきたいのが、ウェブ市場でどのように戦うかということです。お客様との出会いのチャンスそのものは増えているわけですから、重要なのはそれでも記憶に残ること。弊社のお客様には、そこを目指していただきたいという思いがあります。
増え続けるウェブ市場で出会いのチャンスを活かすために
ウェブ市場での出会いのチャンスを活かすためには、いつお客様と出会ってもいいように備えておくことが必要です。そもそも検索は、何か知りたいことがあるときにするものですから、お客様が商品やサービスの検索をするときには、いま使っているものに対する疑問や確認などの理由があるはずです。
例えば、「いま使っているものよりも、もっといいのがないか」「(とりあえず購入したため)ほかのものを探したい」「満足しているけれども、本当にこれでいいのか」などという気持ちから検索という行動が起こります。
そこで検索結果として自社商品やサービスが登場した際、「探していたのはこれだった!」「やっぱりこれでいいんだ!」と思わせることができれば、それはお客様にとって探していたものに出会ったという満足になります。そしてその瞬間の満足が、購入やリピートという循環を生むのです。
そのためには、商品やサービスがお客様に役立つ、お客様の課題を解決することに貢献しているかという、そもそもの商品またはサービスづくりがしっかりしていなければなりません。それに加えて、商品やサービスの情報発信、印象に残る名前など、やるべきことはたくさんあります。
まとめ
以前のコラムで指名検索を取り上げたことを覚えていらっしゃいますでしょうか。記録と記憶の必要がないウェブ市場で、覚えてもらうことに注力し成功している事例としてご紹介させていただきました。記憶に残りにくい状況で成果を上げるためのヒントがたくさんあるからです。
指名検索の回数を増やすためには、商品やサービスのネーミングをはじめとして、さまざまなことを練り直す必要に迫られるかもしれません。今回お伝えしたように、ネットの世界はチャンスが多いものの記憶に残りにくいという特徴もあるため、その点を考慮しておくことが成果を上げるためには必要不可欠です。
大海へと漕ぎ出すときに羅針盤を持つ必要があるのと同じように、リアル市場からウェブ市場へとシフトしていくためには、そこで波間に埋もれてしまわないようにするためのウェブ戦略が欠かせません。
貴社のウェブ戦略は、いまのウェブ市場で戦えるものになっていますか。