ZMOTとは?スマホ時代の顧客の購買行動と情報発信のヒント

前回のコラムでモバイルファーストに触れました。モバイルの代表格ともいえるスマートフォンが大きく購買行動に影響を及ぼしたことのひとつに、ZMOTがあります。ZMOTとは、お客様が商品やサービスの評価・購入を決めるタイミングやその方法についての考え方です。今回は、ZMOTとそれが注目される理由、お客様が購入を決定する際に参考にする情報、それを踏まえてどのような発信をするべきかなどについてお伝えします。

ZMOTとは?


ZMOT(「Zero Moment of Truth」読み方は「ジーモット」)とはGoogleが提唱するオンライン上の消費行動の概念のひとつで、購入に先立って消費者が商品やサービスを下調べし比較検討するという購買プロセスを示します。

更にいうならば、オンライン上で消費者がさまざまなリサーチをする中で、ひとつの商品やサービスにたどり着くときには、すでに購入の意思決定をしているという解釈が可能です。

このZMOTは、スマートフォンの普及を受けて広まってきた考え方で、コロナ禍でのEC需要の高まりや、忙しく時間を節約したいビジネスパーソンを思い浮かべていただけると、わかりやすいのではないでしょうか。

実際に商品やサービスを購入する前に詳細な情報をオンラインで入手し、類似商品やサービスと比較検討の上、ひとつに絞る。ECの配送では時間がかかるので、商品をすぐに手に入れる感覚で店舗に出向くということが、現実に起こっていることを意味します。

すべてのお客様が来店の目的を教えてくださるとは限りません。来店したお客様を接客し、そこから商品をアピールするつもりでいては遅いということがありえます。

すでに購入決定しているお客様や実際の商品を確認しに来たお客様にとっては、不要な接客、さらにいうならば、時間の浪費と解釈される可能性すらあるということです。

MOTから始まり時代に合わせて進化したZMOT


ZMOTが提唱されるようになった背景や流れを知っておくと、この消費行動に対する理解が深まります。ZMOTの前から提唱されている消費行動を見てみましょう。

■ZMOTに至るまでの流れ

(MOT(Moment of Truth))
前提:Stimulus 「刺激」
0:ZMOT(Zero Moment of Truth) 「知る」
1:FMOT(First Moment of Truth) 「買う」
2:SMOT(Second Moment of Truth) 「使う」
3:TMOT(Third Moment of Truth) 「すすめる」

MOTは、スカンジナビア航空の再建を成功させたヤン・カールソン(当時CEO)によって提唱されたものです。日本では1990年、著書「真実の瞬間」で「最前線の従業員の15秒の接客態度が、その企業の成功を左右する。その15秒の瞬間を“真実の瞬間”という」と発表しました。お客様がブランドイメージの形成やサービスの質を判断するための時間は、それだけしかないということを明らかにしました。

時系列でいくと、MOTの次はZMOTを飛ばしてFMOT(エフモット)とSMOT(エスモット)、TMOT(ティーモット)になります。FMOTとSMOTは、2005年、P&G社のアラン・ラフリーによって提唱されました。

FMOTでは、MOTで15秒とされた時間がさらに短くなり、顧客が店頭でどの商品を選ぶか判断するのに要する時間は3~7秒だとしました。マスメディアの広告よりも実際に商品を手に取る店頭のプロモーションのほうが重要だという指摘でもありました。

SMOT(エスモット)とは、購入した商品を使用した上での意思決定を意味します。同じものをまた買うか、別の商品にするかの判断です。TMOT(ティーモット)は、実際に使ってみて良かった・気に入った商品を口コミやレビューなどですすめることです。

GoogleがZMOTを提唱したのは2011年です。インターネットやインターネットに接続するデジタルデバイスの普及を受け、FMOTの手前に顧客の消費行動があり、段階で顧客の消費行動が大きく変わったと発表しました。店頭に足を運ぶ前に、顧客は商品やサービスについてインターネットで情報収集をし、その段階でほぼ意思決定をしていると分析しました。

なお、顧客はどの段階でも競合他社の商品やサービスを選択する可能性があり、「知る」「買う」「使う」「すすめる」という②~⑤のプロセスを経て、優良顧客となっていくことを表しています。

■ZMOTの重要性

ZMOTの重要性は、顧客が店頭で商品やサービスを手に取るときには、インターネット上で情報収集や比較検討を終え、すでにほぼ意思決定がされていることを明らかにした点にあります。

もはや、インターネット利用率の高さやPCやタブレット、スマートフォンなどデジタルデバイスの普及率の高さを疑う人はいないでしょう。一億総情報発信時代ともいわれ、いつ誰もが好きなように発信かつ情報収集できる現在では、その段階で顧客に十分な情報を提供しておくことが非常に重要です。

では次に、顧客がどのようにインターネット上で情報収集しているかを見てみましょう。

ゼロ時点での判断材料となるさまざまな情報


顧客が商品やサービスを知る段階で参考にしている情報は、非常に多岐にわたります。大きくWebサイトとSNS、その他に分けて、具体的にどのようなものがあるのか見てみましょう。

■Webサイト
・検索エンジンによる検索(GoogleやYahoo!など)
・メーカーやブランドのWebサイト
・小売店や販売店のWebサイト
・ECサイトやECモール
・商品比較サイト

■SNS
・InstagramやTwitter、Facebook、noteなどで検索
・メーカーやブランド、インフルエンサーのアカウントをフォロー
・メーカーやブランド、インフルエンサーのページや投稿に「いいね!」をする
・LINE公式アカウント

■その他(動画や口コミなど)
・YouTubeでの商品紹介動画
・メルカリやYahoo!オークションなどのアプリや転売サイト
・商品レビューサイトや商品レビュー情報

商品やサービスを知るという段階で、顧客は実にさまざまな情報に触れ、ひとつの商品やサービスについて詳細な情報をインターネット上のあちらこちらから集めています。

それは商品の仕様や特徴、画像、価格、レビュー(ポジティブだけでなくネガティブなものも)、購入方法、決済手段、配送料、配送までの日数などで、個人差こそあれ、入念に調べて上げているといえるでしょう。だからこそ、調べていく中で比較検討をし、これがいいと思えるものに絞れた時点ですでに購入の意思決定が終わっているということになるのです。

ここでポイントになるのは、購買行動をする顧客の主体性です。顧客が主体的に情報収集、判断をしていきますので、メーカーやブランドが発信するメッセージが届きにくくなっているといえます。この点は、作り手側からコントロールするのが難しい部分です。

メーカーやブランドなど、商品やサービスの作り手が発信する情報もさることながら、何がいいかを判断する際に参考とされているのは、利用者の感想(レビューや口コミ)といえるでしょう。オンライン、オフラインを問わず、口コミによって広がる評判はいつの時代も重視されます。

つまり、情報発信の際のポイントは、顧客がどのような情報を求めているのかをできる限り詳しく把握した上で行うことです。

顧客が求める情報を客観的に知る手がかり


顧客がどのような情報を求めているのかわからない場合、まずは有名なあるいはよく売れているサイトを参考にしましょう。

例えばAmazonの場合、商品の仕様やサイズが詳細に記載されています。画像点数も豊富で、別のカラーを選ぶと画像内での商品もその色に変わり、拡大して見るのも簡単です。価格や配送、返品に関しても、パッと目につくところにまとめて表示しています。それでも情報が不足する場合に備えて、問い合わせフォームも用意されています。

どのようなクーポンがあるかが期限付きで表示されるため、割引価格というお得感に負けてつい買ってしまう顧客もいることでしょう。カスタマーレビューは星の数で表され、詳しい情報を知りたい人向けにコメントを見ることもできます。コメントも星の数別に分けられ、評価の高いものだけでなく低いものも確認可能です。

それに加えて、類似する商品との比較や合わせて購入されているもの一覧、自分が過去に閲覧した商品なども合わせて表示されます。Amazonはメーカーではなく販売者のため、客観的な立場に立てるのではないかというご意見もあるかもしれません。しかし、見習うべき点はそこにあるのではないでしょうか。

■顧客によって検索されている情報がヒント

ここで一旦、先ほどの顧客が情報収集の段階で判断材料にしている情報へと戻りましょう。そこでご紹介したものは、メーカーやブランドからのメッセージ発信が含まれているものの、その多くがほかの顧客の意見が集まるところだという特徴があります。つまり、「実際のところどうなのか」という第三者の評価を、できるだけ多く集めたいということなのでしょう。

かつて、自社商品やサービスの評価評判は、コスト(費用や時間、労力)をかけて調査するのが当たり前という時代がありました。しかし、今は顧客の声が身近なところに溢れています。WebサイトやSNS、YouTubeなどで、顧客の生の声を得ることが可能です。この状況を利用しないのはもったいないとしかいいようがありません。

インターネット上に溢れている評価や評判を拾うことは、ほぼコストをかけることなく誰にもできる調査です。検索すればすぐに出てきますので、「自社商品(サービス) 評判」「自社商品 口コミ」などで検索してみてください。どのような点が評価されているのか、または評価されていないのかがわかります。

その上で、次に考えなければならないのがWebマーケティング戦略です。

必要とされるWebマーケティング戦略


Webマーケティング戦略とは、顧客と自社商品(サービス)との接点をインターネット上でどのように持つかをさします。冒頭のZMOTに戻りますが、顧客が何か商品やサービスを探すには必ず理由があります。ZMOTでいうところの「Stimulus(刺激)」です。

解決しなければならない課題や悩みという刺激から、顧客の購買行動はスタートします。問題解決や欲求を満たすための手段が商品やサービスです。自社商品やサービスのターゲットにはどのようなアプローチが有効なのかを考えると同時に、自社サイトやSNSでどのような情報を発信するか、検索で上位に表示される対策(SEO対策)もとっておかなければならないことを意味します。

個々の対策はもちろんですが、別コラムで触れたように、自社サイトやSNSなどでの対応に統一感があることも不可欠です。このような点も含めて、企業イメージやブランドイメージを構築していく際に必要となるのがWebマーケティングだといえます。

これは好む好まざるの問題ではなく、オンラインでのビジネスが急速に広まったことによる必須の対応と理解されるべきでしょう。もはや顧客の購買行動にインターネットでの情報収集は必須です。それが前提であると理解して、今後のWebマーケティング戦略を練ることをおすすめします。

まとめ


ZMOTとは、インターネットとそこに接続するデジタルデバイスの普及を受け、実際に商品やサービスを手に取る前に、オンライン上で行われる情報収集や意思決定などの消費行動をさします。ポイントとなるのは、顧客が主体的に詳細な情報を集めることと、情報比較に重点が置かれていることだといえます。

文中でご紹介したとおり、顧客は実にさまざまな情報を意思決定の判断材料としています。自社ホームページ運用だけすればよい、SNSの発信はできる人ができるときにやる(=不定期更新)など、対応にバラつきがあることは望ましくありません。

別の捉え方をすると、情報発信に注力すれば、それが成果につながりやすい状況だということです。ただし、どのように情報発信するかについて戦略を考えておくことをおすすめします。ZMOTという消費行動を理解して、スマホ時代のビジネスチャンスを掴んでください。

この記事を書いた人

吉野 太佳子代表取締役|中小企業診断士 , MBA , 上級ウェブ解析士 , Google アナリティクス認定資格

Webブランディングの専門家として、中小企業・小規模事業者さまをご支援させていただきます。

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